さんの書評2026/04/22

宿命を生きる若者たちを読んで

宿命を生きる若者たちを読んで 考察する若者たちで紹介されていた作品であったため、興味を持ち手に取ってみた。 この本は、2010年代の格差社会において若者の幸福度が高い理由をまとめた作品である。若者の定義については30代までを一つの区切りとし、その世代を対象としている。内容としては、様々なデータを用いて若者と40代以上の世代を比較し、その結果から考察される仮説を提示している。 若者の幸福度が高い理由として、日本社会が成熟期にあるため将来への期待値がもともと低い点や、SNSや家族などを通じて自分の居場所を確保しやすくなっている点が挙げられていた。これらの仮説には一定の納得感がある。幸福への期待値が低く、かつ安心できるコミュニティに所属し続けることで、不幸を感じにくくなるという構造は理解できる。 一方で、このような状態が望ましいかについては本書では十分に検討されていなかった。この点については更なる議論の余地があると感じた。例えば家族というコミュニティは永続的ではなく、両親の死などによって消失する可能性がある。その際、新たなコミュニティに適応するための経験が不足している場合、対応が困難になることも考えられる。SNSなどを通じて新たなつながりを得ることは可能であるが、異なる価値観を持つコミュニティとの関係構築には一定の経験が必要であると思われる。 以上より、本書は若者の幸福感の背景を理解するための資料として有用であり、現代の若者像や将来の社会を考える上で参考となる一冊である。

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