みんなの書評

さんの書評2026/05/25

16歳からのリーダーシップを読んで

16歳からのリーダーシップを読んで ピポットで紹介されていたため、この本を手に取ってみた。この本はリーダーシップについて紹介した本である。構成としては、リーダーシップの概念、リーダーシップの事例紹介、自分らしいリーダーシップの構築、以上3つで成り立っていた。また数々の研究から16歳からリーダーシップ論について学ぶ必要があると著者は主張しており、そのため本書においては難解な言葉は使用されておらず、大変わかりやすい文章で記載されていた。 本書では、自分らしさを貫きながら周囲に良い影響を与えるオーセンティックリーダーシップの重要性について説かれていた。このオーセンティックリーダーシップに関しては新しいリーダーシップのように紹介されていたが、過去の偉人においても似たようなリーダーシップを発揮する事例を知っているため、新鮮味に欠ける内容であった。例を挙げると、劉邦である。彼はもともと小役人であったが、自らの天下取りの野心を動機とし、彼自身が培ってきた行動力、人間性により次々と仲間を増やし、それにより秦王朝を倒し、これまで取られてきた厳しい法律を撤廃することで、すべての人々を幸福にした。まさにオーセンティックリーダーシップの事例と言える。しかし本書では、オーセンティックリーダーシップと旧リーダーシップが明確に区別されていた。このことから著者は、人々はリーダーシップとはオーセンティックリーダーシップではなく、旧リーダーシップであると誤解していると考えているように思われた。その理由に関して踏み込まれていなかったので、本書において踏み込んでいただければ、より完成度は高かったと思われる。とは言え、本書のメインターゲットは16歳であるため、あまり踏み込みすぎると冗長となってしまう恐れがあるため、あえて省いたものかと思われる。 最後になるが、本書に関しては10代の方にリーダーシップという概念を学んでいただく上で非常におすすめの1冊である。また40代以降の人にもオーセンティックリーダーシップを発揮する環境を整える上で非常に参考となる1冊であるため、読んでいただきたい。

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さんの書評2026/05/181いいね!

沖縄の不都合な真実を読んで

沖縄の不都合な真実を読んで 最近起きた辺野古沖転覆事件から沖縄問題に興味を持ち、この本を手に取ってみた。 この本は、沖縄が抱える問題を多角的な視点からまとめた作品である。基地問題だけではなく、貧困や身分制社会についても紹介されており、それらが複雑に絡み合うことで発生している問題をわかりやすく説明していた。 最初に驚いたのは、沖縄は本土と比較して身分制社会の影響が強いという点である。その背景は江戸時代まで遡り、当時の人口における武士・貴族の割合は36%と高かった。その後の琉球処分や日米安保条約においても、沖縄県内の既得権益を持つ人たちの権力保護につながっていたという視点が紹介されていた。一見すると基地問題とは別問題に見える。しかし基地問題に反対することで、日本政府から妥協案として補助金などを引き出す、ある意味で基地問題をATMのように利用している側面がある。また、それらの補助金が一部団体に偏り、末端の県民にまで十分行き渡っていないことも問題として挙げられていた。だからこそ、基地縮小後に補助金へ依存しない展望プランを持つことが重要であると著者は主張していた。身分制社会という視点は、沖縄問題を考える上で非常に重要な視点の1つであると言える。 もう1つ驚いたのは、「沖縄総意」という考え方である。一見すると、自分たちの住む地域に対して一致団結した誇りある思想のように見える。しかし本書では、それが異論を許さない空気につながる危険性を指摘していた。実例として、上原正稔氏の「パンドラの箱」事件が紹介されていた。第二次世界大戦時の慶良間諸島における集団自決の実態をまとめた上原氏の記事に対し、琉球新報の対応が問題視され、裁判では上原氏が勝訴した事件である。 この話は、最近発生した辺野古沖転覆事件における琉球新報や沖縄タイムスの報道姿勢と非常に似ていると感じた。例えば、救助できなかった責任が海上保安庁側にあるような印象を与える報道、お亡くなりになった高校生を活動家側の仲間であるかのように扱う報道、ヘリ基地反対協議会側への責任追及が薄い点などである。仮に沖縄在住で、沖縄タイムスや琉球新報のみから情報を得ている場合、それらの主張だけを信じ、それに対する異論をデマだと受け止めてしまう危険性もあると感じた。 本書は沖縄問題を多面的にまとめた完成度の高い作品である。しかし出版が2015年であるため、現在の国際情勢において実現が難しくなっている内容(例:沖縄米軍基地削減)もあると思われる。最新の世界情勢を踏まえた続編を期待したい。今回発生した辺野古沖転覆事件をきっかけに沖縄問題を深掘りしたい人にとって、1つの視点を得る上で重要な作品であり、ぜひお勧めしたい1冊である。

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さんの書評2026/05/17

がんばらないを読んで

がんばらないを読んで タイトルに惹かれてこの本を手に取ってみた。この本は地方の医者である著者が実際に診察した経験をもとに、患者さんや障害者さんから学んだ「頑張らない生き方」について、エッセイ風にまとめた作品である。また、現代医療において足りない点についても紹介した1冊である。 本作品で紹介された患者さんは、高齢者や末期癌患者など、医療では助かる可能性の低い人たちが多かった。しかし、そのような状況下においても、患者さんたちは頑張りすぎず、自分らしさを失うことなく生きていた。その姿から著者は、頑張らない生き方と、患者の寂しさに寄り添うことの重要性を学んだ。人が人を助ける際に重要なことは、その心に寄り添うこと、そして患者にとって頑張りすぎない生き方とは何かを常に問いかけることである。本作品では以上2点が強く主張されていた。この点に関しては、傾聴という観点から非常に同意できる。医者という立場ではなく、1人の人間として患者さんに向き合うことで得られた貴重な学びであると言える。 医療とは疾患を治癒することだけではなく、患者さんに寄り添うことである。本作品は、特に患者が感じる孤独感や疲労感との向き合い方について、エッセイ風にわかりやすく紹介された1冊である。医療関係の仕事に就く人だけではなく、人生に疲れた人にもぜひ手に取っていただきたい1冊である。 事実

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さんの書評2026/05/16

貧困と脳を読んで

貧困と脳を読んで タイトルに惹かれてこの本を手に取ってみた。この本は『最貧困女子』の取材経験及び著者自身が患った高次脳機能障害の経験をもとに、貧困と脳の相関を仮説ベースでまとめた1冊である。本書では、そのような脳を「不自由な脳」という新しい言葉で定義していた。これは、脳の認知・情報処理機能が低下することで仕事が困難になり、不安耐性が低くなることにより危機的状況への対処を先延ばしにしてしまうことで貧困につながると本書では紹介されていた。 所々に著者自身の経験及び過去の取材記録を見直した中で、新たに得た学びから考察される過程は非常に面白かった。また幅広い年代を対象とした貧困者から考察されているため、「不自由な脳」とは誰にでも起きる可能性のあるものということが主張されていたように思われる。ただ著者自身の経験ベースでまとめられた作品であり、あくまで仮説ベースの作品であるため、脳科学者などの意見及び検証試験のデータで補強すれば、さらに完成度の高い作品に仕上がったと思われる。 とは言え、生活保護受給者のユーチューバー紹介など、貧困者に対して寄り添う内容も紹介されている点は評価できるため、貧困や脳に対して興味がある方だけでなく、実際に現状貧困である方に対しても手に取っていただきたい作品である。

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さんの書評2026/05/12

面白い

民俗學の泰斗、柳田國男の、研究の一部である。 一応、「人間が幸福になる道」を探る一環で、日本人が昔からどういふ妖怪を「共有」してきたかについて一応、広範囲に調査の手を広げる。  最古の『天狗の話』(明治四十二年三月)から『妖怪名彙』(昭和十三年~十四年)に至るまで、結構長い期間、柳田がその辺で書いてた、妖怪に関するいろいろが収録である。 著者が幼少期、祠の中にある石を触って、土弄くって遊んだ折、太陽が多数見えた、といふ実際の経験略して実験から、幻覚がいかに共有されるかについて、書いた文章は昭和だった。雑誌へ掲載、発表順に並んでないので若干困る。 著者は、明治期のインテリとして、「日本多民族説」を当然のやうに振り回してゐた。ただ、それについて、「自分達は先住民族を弾圧迫害した者の末孫」といふなんぞ、贖罪意識かなんかがあり、其への慰霊をやるといふ意志、また実在した「本州先住民族」としての「やまひと」の調査が、なんか入ってゐる。その、妖怪じみた異人は、平地人と交流し、ロールモデルのやうなものとなり、迫害され山へ追ひやられたが均質化は一応被ってる、らしい。 この辺について、著者は発表時に交流があった南方熊楠による、「やまひと」批判があるのだが、本著には解説がない。両者の往復書簡で、南方熊楠説の、ナマケグマに関する、蟻塚をぶっ壊すベアクローを持ち、蟻を食べるときにはびろーんてなる唇で大きな音を立て、「フード被った」やうな頭をし、「人食ってるに決まってる」といふ情報の傳播してできたのが東アジアの「広がる唇を持つ妖怪」といふのは一応まあ言及がある。その狒々像へ著者は「本州先住民族への意味付け」、お話の中でおさる系妖怪とホモサピ系が混ざってんぢゃねえかと疑問を持つ。でかういふ、明治期にやった、天狗が「西欧のフェアリイ」のやうなケルト背負ってる、明るい海系のアレと対称的に、山岳系で暗いものでさらに武士道の基礎を作った先住民族であるといふ説は、大正期にはずんずん萎えて行き、昭和ではどっかへいく。 その妖怪に関する情報の分析は一応スケプティカルである。「あなたの田舎で妖怪はなんと鳴くか」といふ問ひへ、「蒙古襲来から」モッコ、モーといふ、といふ説明へ疑問を抱き、他の膨大な資料から「咬もう」の系統ではないかと言ったり、鬼や河童のやうなメジャーらしいアヅキトギ、アヅキアラヒに関し、「研いでるのを見てないのに共通して「小豆を研いでる」と説明される」とか言ってゐる。

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さんの書評2026/05/111いいね!

人新世の資本論を読んで

ピポットで紹介されていたので、興味を持ち手に取ってみた。 この本は人類の地球破壊による気候変動から引き起こされる社会問題及びその解決策を紹介した1冊である。本作品では、社会問題の原因は資本主義、生産至上主義であるとされ、その解決法としてマルクス思想に基づき構成された脱成長コミュニズムという方法が紹介されていた。 前半は資本主義社会において検討されている環境対策(SDGs、グリーンニューディール、ジオエンジニアリング、緑の経済成長)の問題点が述べられていた。これらの方法では本質的な解決につながらず、むしろ不平等をいっそう拡大させるという副作用も引き起こすと提唱されていた。 後半は脱成長コミュニズムについて紹介されていた。これは資本主義、成長主義を否定し、平等で人類が持続可能な生活を送る社会を目指すため、使用価値を重視し、生産者たちが生産手段を共同管理する社会である。これらの考え方を受け入れる際には成長第一主義を捨てる必要がある。 前半に関しては、どのような政策であっても、それが資本主義のもとであれば解決策はないという現代社会において大変挑戦的な内容である。電気自動車におけるジェヴォンズのパラドックスなど実例を紹介していただき大変わかりやすかった。 ただ後半に関してはいささか理解するのに難解な点があった。脱成長コミュニズムの柱として、労働時間の短縮とエッセンシャルワークの重視が紹介されていた。前者に関しては労働時間を短縮して生活の質を向上することが目的である。それらを実施する際、労働力不足、生活費不足が発生するが、それらを補う方法として賃上げやワークシェアが挙げられていた。しかし基本的に成果物に対する必要労働量は変わらない。そのため必要な総労働時間も変わらないことになる。解決策としてワークシェアを実施した場合、1人あたりの労働時間は減ったとしても、複数の業務を掛け持ちすることになれば、総負担は大きく変わらないのではないか?また賃上げしたとしても負担するのは企業であるため、一部の企業では倒産するリスクも発生すると思われる。本書ではAIを使用することを否定していたが、現実的に実現するためには、AIなどを使用して人間にかかる労働時間を減らし、減った労働時間分の賃金をベーシックインカムで政府が補填するという方法が現実的であると思われる。 後半に関しては、エッセンシャルワークは環境負荷が少ないため、その価値を重視するべきだと述べられていた。しかしエッセンシャルワークの中でも物流などCO2を排出する業務に関しては、環境負荷が低いとは言えない。ただ本文中をよく読むと、ケア労働系のエッセンシャルワークに限定されていると思われる。これは人間同士のケアを重視する労働であるため環境負荷が低い。しかし見出しでは「エッセンシャルワークの重視」と述べられているため、読者に混乱を生む恐れがある。以上より、「ケア労働系のエッセンシャルワーク」と表現していただければ、より完成度が高かったと思われる。 まとめになるが、現在の資本主義社会における環境対策(SDGsなど)の限界をデータを用いて示しており、非常に挑戦的な作品と言える。また脱成長コミュニズムという新しいアプローチを提示している。さらに3.5%の人が非暴力で立ち上がることにより社会が変わるという考え方を提示することで、読者に行動を呼びかけている点も興味深い。ただ脱成長コミュニズムを実践する上で重要な柱となる箇所に関しては、詰めの甘さやタイトルと本文の対応の不十分さなどを改善いただければ、より完成度の高い作品になったと思われる。 現代資本主義社会における環境政策(SDGsなど)に疑問を持っている読者にぜひお勧めしたい1冊である。

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さんの書評2026/05/10

多動脳を読んで

多動脳を読んで 著者であるアンデシュ・ハンセンに興味を持ち、検索したところこの本が見つかったため、興味を持ち手に取ってみた。 この本はADHDについて精神科医の視点から紹介した1冊である。内容は前半でADHDの特性や歴史について、後半でADHDの強み及びその活かし方についてまとめられていた。 前半の内容で特に興味深かったのが、ADHDの特性を持つ人類が生き残ってきた理由について紹介されていた点である。理由の1つとして、ADHDの特性の1つである衝動性が、状況に応じた判断が求められる狩猟や地球規模の災害からの避難と相性が良かったことが挙げられていた。あくまで仮説レベルではあるが、非常に面白い着眼点である。 後半の内容において特に興味深かったのが、ADHDの強みを活かす方法の1つとして、ADHDの人の弱みをサポートする人を常に周囲につけておくというアイディアが紹介されていた点である。しかし、この点に関しては2点ほど疑問が生じる。 1点目は、サポートする人が果たしてADHDの人の振る舞いに耐えることができるかという問題である。ADHDの人の特徴の1つとして衝動性が挙げられる。裏を返せば、相手の気持ちを考える前に衝動的に発言するリスクがあり、その結果サポートする側の人を傷つけてしまう恐れがある。 2点目は、ADHDの人がサポートする人を遠ざける可能性があるという点である。ADHDの強みとして、クリエイティブさや起業家気質、フレキシブルな性格などを鑑みると、リーダーに向いている側面があると思われる。しかし権力を持ちすぎると、サポートする人の意見を疎ましく思い聞かなくなり、その結果遠ざけてしまい、ある意味独裁的になるリスクも発生し得る。 サポートする側に発生する可能性のあるリスクについても、もう少し掘り下げていただければ、さらに完成度は高かったと思われる。 ここからはあくまで個人的見解であるが、上記の問題を解決する方法として2つのアクションが考えられる。 1つ目は、ADHDの人をサポートする役割をChatGPTなどのAIに担わせることである。AIであれば感情を持たないため、ADHDの人が失言したとしても感情的に傷つくことはない。また、プロンプト設定などにより、ADHDの人による衝動的な対応で他人を傷つけた場合、それを論理的かつわかりやすく説明することも可能であると思われる。 2つ目は、ADHDの人とサポートAIの運用に対して、「ADHDの人は必ずサポートAIの意見を傾聴する」というルールをあらかじめ定めておくことである。ルールという、ADHDの人とサポートAIの双方から独立した基準を設けることで、両者に一定の緊張関係を生むことができる。そのため、ADHDの人がサポートを無視して暴走するリスクを軽減できる可能性がある。 まとめると、本作品はADHDについて、その特性、強み、社会での生き方をまとめた1冊である。また、ADHDを活かすためには周囲のサポートが必要であることを主張している作品であるとも言える。個人的には、AI活用などADHDをサポートする方法について、もう一歩踏み込んでほしかったが、ADHDについて興味のある人にはぜひ手に取っていただきたい作品である。

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さんの書評2026/05/07

西洋の自死を読んで

西洋の自死を読んで 移民政策に関して興味があり、調査をしていく過程において、この本が候補に上がってきたため、興味を持ち手に取ってみた。 この本は欧州各国が外国人労働者や移民を受け入れることで、どのように欧州が自死していくかをまとめた1冊である。全体の構成としては、欧州が移民を受け入れた背景、移民受け入れ前の欧州、移民問題について述べられていた。興味深かったのが、移民を受け入れる前の欧州において、彼らのアイデンティティが不確かであったという点である。その理由として、1.過去の帝国主義、植民地主義、紛争介入失敗により相手国へ与えた罪悪感、2.ダーウィンの進化論などの影響によるキリスト教信仰の衰退と、それに伴う道徳・倫理観への影響が挙げられていた。アイデンティティが不確かな欧州人と、自国文化を嫌悪し欧州文化を見下す移民たちが出会うことで、欧州文化が移民側の文化に染まりやすい素地が形成され、それが欧州の自死につながると警鐘していた。また、それらの流れを止めようと市民が立ち上がっても、移民側に立つことは「善」であり、欧州の人々を代弁することは「悪」であるというエリート層の思想や、人種差別主義者というレッテルを貼られることへの恐怖により、マスコミなどから攻撃され、自浄作用が機能しなくなると主張していた。 日本においても、1に関しては第二次世界大戦における戦争責任に対する自虐史観と重複する部分があると思われる。また、外国人支援を重視する政治運動なども存在するため、欧州と同様の問題が発生する可能性は否定できない。そのような状況を避けるためにも、まず日本人のアイデンティティとは何かを学ぶ必要がある。そのためには、日本の歴史をさまざまな角度から学び直し、自分なりの日本人像を持つことが重要であると本書から感じた。 全体として、欧州の移民問題をアイデンティティの観点からまとめ上げており、日本でも起こり得る問題として警鐘を鳴らしている点は非常に有益である。しかし1つ批評的な点を述べるならば、本作品の主張において現在の欧州移民問題は、過去の帝国主義や植民地政策のツケ払いという側面もある。であるならば、欧州はいずれかの世代でその負債を引き受ける必要があり、それが現代に回ってきただけとも考えられる。罪の精算という観点で捉えるならば、単なる悲観論ではなく、どのように未来へ向けて折り合いをつけるかという視点も論じられていれば、さらに完成度が高まったと思われる。 移民問題に興味のある方は、ぜひ手に取っていただきたい1冊である。

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さんの書評2026/04/301いいね!

国内の図書館が持つ多様な姿に触れることができました。地域に根ざした小さな図書館か

国内の図書館が持つ多様な姿に触れることができました。地域に根ざした小さな図書館から、独自の企画や建築を生かした施設まで、それぞれが異なる魅力を持ち、図書館という場の奥深さを改めて感じました。写真やレイアウトの美しさが際立ち、美術書として眺めるだけでも楽しめる一冊だと思います。図書館を“使う”だけでなく“見る・味わう”という新しい視点を与えてくれる内容でした。 随想を読んでいると、著者が図書館という場所に寄せている思いが伝わってくるようでした。単に本を提供するだけではなく、訪れた人が自分で情報を選び取る力を育み、よりよく生きるための道を照らす存在として図書館を描いている点が印象的でした。また、地域の図書館が持つ郷土資料の魅力にも目が向けられています。思いがけない資料との出会いが、その土地の歴史や文化への理解を広げ、利用者の世界を押し広げてくれるのですね。図書館が持つ温かさや奥行きを、改めて感じさせてくれる内容でした。

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さんの書評2026/04/25

運動脳を読んで

運動脳を読んで 著者であるアンデシュ・ハンセンに興味があり、本作品を手に取ってみた。 この本は運動が脳に与える影響を科学風の論述を用いてまとめた1冊である。著者の主張は運動することにより脳に良い影響があるということである。具体的には、集中力が増し、気持ちが晴れやかになり、不安やストレスが減り、記憶力が向上し、創造性が増し、知性が高まるという点である。 しかし本書で紹介されている脳への影響を示した検証試験において以下の点で疑わしい点がある。 1.エンドポイント、症例数の記載がないものがある。(例 5章 動作を習得するメカニズムに運動が与える影響についての調査) 2.再現性の検証がない(例 7章スウェーデンの1,200,000人を超える男性の兵役検査 スウェーデンのみで他の国での兵役検査の結果検証の紹介がない) 3.紹介した調査をまとめた論文の紹介がない 本書で紹介されていたすべての試験、調査がこれに該当 1.2に関しては、書籍分量の制限による都合により省略されたという解釈もできる。しかし紹介した調査をまとめた論文紹介がないことに関しては調査計画及び試験デザインの妥当性を確認する上においては致命的であると言える。仮に参考文献としてまとめるページが取れなかったとしてもwebページでまとめ、そのページのリンクをQRコードで掲載すれば、本書においての対応は1ページのみの追加で事足りると思われる。 本作品でもそうだが、著者であるアンデシュ・ハンセンの脳シリーズに関して、著者の主張を補強する調査結果及び試験結果をまとめた論文の紹介がないのは問題があると思われる。(そういう理由で私はあえて本書の紹介で、「科学的」ではなく「科学風」と言及した)。とは言え全面的に彼の主張を否定するエビデンスは存在しないので、1つの仮説として受け止めた上で本書を読むことをお勧めする。科学風の娯楽に対して興味のある方にお勧めしたい1冊である。

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