コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2026/04/10
やさしい日本語を読んで 市民大学で受講した講義で取り上げられた内容で、その際紹介されていた作品だったので興味を持ち手に取ってみた。 この本は多文化共生社会を日本で築くために必要なツールとして、やさしい日本語という概念を紹介した一冊である。前半はやさしい日本語に関する説明、後半は多文化共生社会において必要なことがまとめられていた。 本作品の内容は、前半はほぼ市民大学で学んだことと重複していたので既知であるものが多かった。ただ、これまではやさしい日本語とは定住外国人だけに対するものと考えていたが、ろう者に対しても必要であるということが本書では紹介されており、この点に関しては新たな学びであった。また、定住外国人の子供たちにやさしい日本語で接するのは慈善だけではなく、将来日本で納税者として働いてもらうという投資の意識を持つことが重要だという考え方は斬新であった。ただ、定住外国人が引き起こす犯罪に対するリスク管理の観点から見ると少々疑問が残る。本書でもその点は2012年の統計を出して10000人あたりの犯罪者数は日本人の方が外国人よりも多いと述べていた。しかし2012年のデータを使用した根拠が述べられていない点、本書が出版されたのが2016年であることを考えるとより新しいデータである2015年、2014年の可能性もある点、2012年以前のデータを出していない点からチェリーピッキングの可能性も否定できないことから、一概に本書の主張を補強する上ではやや弱い。 後半の多文化共生に関する点は、いくつか首を傾げる点があった。 地域の日本語教室が定住外国人の居場所として必要と紹介されていた。しかしこれはボランティア活動とも紹介されていた。この点に関してはいささか疑問が残った。ボランティアとは慈善活動であるが、著者の述べていた投資の意識を持つことに対して矛盾しているのではないか。仮に投資対象として意識する場合、ボランティア活動に対して給料をきちんと支払うべきではないか。やりがい搾取と何ら変わらないと思われる。また文法のミスに関してお互い様の気持ちを持てとも述べられていた。しかし文法のミスに対して寛容になれない人もいる。事実、小職の英語教師が英語文法のミスに関してイラつくnativeもいるので気をつけるよう諭されたこともある。その人たちの気持ちを置き去りにするのはいかがなものかと思う。イラつく人も認めることも多文化の一つではないか。 まとめると共感できたり学びの部分も多かったが、全体的に性善説が主導となる部分が多かった印象を受ける。また外国人に対する対応と比較して、ろう者に対しての対応の進めが少なかったのが非常に残念である。せっかく本作品を通してろう者のコミュニケーションをとる上での苦悩を紹介していただけたのだから、もう少し深掘りしてほしかった。 本書はやさしい日本語に興味ある方におすすめの一冊である。
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