コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2026/05/11 1いいね!
ピポットで紹介されていたので、興味を持ち手に取ってみた。 この本は人類の地球破壊による気候変動から引き起こされる社会問題及びその解決策を紹介した1冊である。本作品では、社会問題の原因は資本主義、生産至上主義であるとされ、その解決法としてマルクス思想に基づき構成された脱成長コミュニズムという方法が紹介されていた。 前半は資本主義社会において検討されている環境対策(SDGs、グリーンニューディール、ジオエンジニアリング、緑の経済成長)の問題点が述べられていた。これらの方法では本質的な解決につながらず、むしろ不平等をいっそう拡大させるという副作用も引き起こすと提唱されていた。 後半は脱成長コミュニズムについて紹介されていた。これは資本主義、成長主義を否定し、平等で人類が持続可能な生活を送る社会を目指すため、使用価値を重視し、生産者たちが生産手段を共同管理する社会である。これらの考え方を受け入れる際には成長第一主義を捨てる必要がある。 前半に関しては、どのような政策であっても、それが資本主義のもとであれば解決策はないという現代社会において大変挑戦的な内容である。電気自動車におけるジェヴォンズのパラドックスなど実例を紹介していただき大変わかりやすかった。 ただ後半に関してはいささか理解するのに難解な点があった。脱成長コミュニズムの柱として、労働時間の短縮とエッセンシャルワークの重視が紹介されていた。前者に関しては労働時間を短縮して生活の質を向上することが目的である。それらを実施する際、労働力不足、生活費不足が発生するが、それらを補う方法として賃上げやワークシェアが挙げられていた。しかし基本的に成果物に対する必要労働量は変わらない。そのため必要な総労働時間も変わらないことになる。解決策としてワークシェアを実施した場合、1人あたりの労働時間は減ったとしても、複数の業務を掛け持ちすることになれば、総負担は大きく変わらないのではないか?また賃上げしたとしても負担するのは企業であるため、一部の企業では倒産するリスクも発生すると思われる。本書ではAIを使用することを否定していたが、現実的に実現するためには、AIなどを使用して人間にかかる労働時間を減らし、減った労働時間分の賃金をベーシックインカムで政府が補填するという方法が現実的であると思われる。 後半に関しては、エッセンシャルワークは環境負荷が少ないため、その価値を重視するべきだと述べられていた。しかしエッセンシャルワークの中でも物流などCO2を排出する業務に関しては、環境負荷が低いとは言えない。ただ本文中をよく読むと、ケア労働系のエッセンシャルワークに限定されていると思われる。これは人間同士のケアを重視する労働であるため環境負荷が低い。しかし見出しでは「エッセンシャルワークの重視」と述べられているため、読者に混乱を生む恐れがある。以上より、「ケア労働系のエッセンシャルワーク」と表現していただければ、より完成度が高かったと思われる。 まとめになるが、現在の資本主義社会における環境対策(SDGsなど)の限界をデータを用いて示しており、非常に挑戦的な作品と言える。また脱成長コミュニズムという新しいアプローチを提示している。さらに3.5%の人が非暴力で立ち上がることにより社会が変わるという考え方を提示することで、読者に行動を呼びかけている点も興味深い。ただ脱成長コミュニズムを実践する上で重要な柱となる箇所に関しては、詰めの甘さやタイトルと本文の対応の不十分さなどを改善いただければ、より完成度の高い作品になったと思われる。 現代資本主義社会における環境政策(SDGsなど)に疑問を持っている読者にぜひお勧めしたい1冊である。
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