さんの書評2026/05/10

多動脳を読んで

多動脳を読んで 著者であるアンデシュ・ハンセンに興味を持ち、検索したところこの本が見つかったため、興味を持ち手に取ってみた。 この本はADHDについて精神科医の視点から紹介した1冊である。内容は前半でADHDの特性や歴史について、後半でADHDの強み及びその活かし方についてまとめられていた。 前半の内容で特に興味深かったのが、ADHDの特性を持つ人類が生き残ってきた理由について紹介されていた点である。理由の1つとして、ADHDの特性の1つである衝動性が、状況に応じた判断が求められる狩猟や地球規模の災害からの避難と相性が良かったことが挙げられていた。あくまで仮説レベルではあるが、非常に面白い着眼点である。 後半の内容において特に興味深かったのが、ADHDの強みを活かす方法の1つとして、ADHDの人の弱みをサポートする人を常に周囲につけておくというアイディアが紹介されていた点である。しかし、この点に関しては2点ほど疑問が生じる。 1点目は、サポートする人が果たしてADHDの人の振る舞いに耐えることができるかという問題である。ADHDの人の特徴の1つとして衝動性が挙げられる。裏を返せば、相手の気持ちを考える前に衝動的に発言するリスクがあり、その結果サポートする側の人を傷つけてしまう恐れがある。 2点目は、ADHDの人がサポートする人を遠ざける可能性があるという点である。ADHDの強みとして、クリエイティブさや起業家気質、フレキシブルな性格などを鑑みると、リーダーに向いている側面があると思われる。しかし権力を持ちすぎると、サポートする人の意見を疎ましく思い聞かなくなり、その結果遠ざけてしまい、ある意味独裁的になるリスクも発生し得る。 サポートする側に発生する可能性のあるリスクについても、もう少し掘り下げていただければ、さらに完成度は高かったと思われる。 ここからはあくまで個人的見解であるが、上記の問題を解決する方法として2つのアクションが考えられる。 1つ目は、ADHDの人をサポートする役割をChatGPTなどのAIに担わせることである。AIであれば感情を持たないため、ADHDの人が失言したとしても感情的に傷つくことはない。また、プロンプト設定などにより、ADHDの人による衝動的な対応で他人を傷つけた場合、それを論理的かつわかりやすく説明することも可能であると思われる。 2つ目は、ADHDの人とサポートAIの運用に対して、「ADHDの人は必ずサポートAIの意見を傾聴する」というルールをあらかじめ定めておくことである。ルールという、ADHDの人とサポートAIの双方から独立した基準を設けることで、両者に一定の緊張関係を生むことができる。そのため、ADHDの人がサポートを無視して暴走するリスクを軽減できる可能性がある。 まとめると、本作品はADHDについて、その特性、強み、社会での生き方をまとめた1冊である。また、ADHDを活かすためには周囲のサポートが必要であることを主張している作品であるとも言える。個人的には、AI活用などADHDをサポートする方法について、もう一歩踏み込んでほしかったが、ADHDについて興味のある人にはぜひ手に取っていただきたい作品である。

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