コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2026/04/20
なめらかな社会とその敵を読んで 21世紀の自由論で紹介されていたため、興味を持ち手に取ってみた。この本はなめらかな社会という複雑な世界を複雑なまま生きることを可能にする秩序を持つ社会を実現するために必要なことをまとめた1冊である。実現するために必要なものとしてPICSY(伝播投資貨幣)、伝播委任投票、伝播社会契約、伝播軍事同盟が挙げられていた。今回21世紀の自由論で紹介されていたPICSYにフォーカスを置いて読んでみた。 構成としては、1.用語の定義 2.数式モデルの紹介 3.実現において必要な要因、4.課題の4つに分かれていた。なお2に関して飛ばして読んでもおおよその内容は掴めた。PICSYとは、過去の取引貢献の履歴から取引に関わった消費者以外の人たちに価値が伝搬する貨幣システムである。特徴として価値伝播により利益が元請けに固まらず、下請けなど幅広い人たちに行き渡るというものである。一見すると、合理的でかつ面白いシステムであるが、果たして取引に関わった消費者以外の人たちをどこまでの範囲で定義するかは検討する必要がある。本で例えると、読者以外の主な登場人物は、本屋、作者、編集者、出版社、印刷会社である。ただし、本の原料は紙とインクである。そのため印刷会社にこれらの原料を提供している会社にまで、原価以外の価値を含めるかどうかは検討が必要である。また本の販売元は本屋以外にも、アマゾンなどのITプラットフォームが挙げられる。これらのプラットフォームに手数料以上のインセンティブを与えることになるのか。以上より消費者以外携わった人たちに対してどこまでの範囲で検討するべきか、そもそも誰がそれを決めるのが妥当であるかがわからなかった。 数式モデルであるが、具体的な例を使って説明いただいたのは評価できるが、所々説明が飛んでいる箇所が散見し行間を読み解くのに非常に苦労した(評価行列、貢献度の説明と、例として挙げられた3人のシンプルなサプライチェーンとその価値の伝搬との関係、等)。また紹介いただいたモデルの中では、誤差に関してどのように取り扱っているのかが読み取ることができなかった。誤差を考慮した上でモデルの妥当性を考慮するべきである。 とは言え数式の不明瞭さは理解上の障壁ではあるが、本質的な思想評価とは切り分けるべきであり、PICSYの特徴である価値伝播により利益が元請けに固まらず、下請けなど幅広い人たちに行き渡るという考え方は元請けが利益を独り占めしない構造として1つの解決法であるとも言える。現代日本における大企業ばかり利益を上げている構造の社会においてその利益を公正に分配する方法を検討している方にぜひお勧めしたい1冊である。
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