さんの書評2026/04/23

教養としての量子コンピュータを読んで

教養としての量子コンピュータを読んで ピポットで紹介されていたので、興味を持ち手に取ってみた。この本は量子コンピュータについて初心者でも興味が持てるようにわかりやすく紹介した1冊である。主な構成は、1量子コンピュータに必要な量子力学の歴史、2量子コンピュータの仕組み、3最新の量子コンピュータの開発状況、4量子コンピュータを利用することによる期待される技術開発であった。 全体的に初心者でも興味を持てるような構成であった。また古典型コンピュータと比較した説明は理解を促進させた。ただ、量子力学の歴史のパートでは量子力学に関する理論が時系列で紹介されていたため、全てを理解するのに少々難しかった。また全般的に各章での説明が全体の説明に対してどのように相関を持っているのかがわかりにくかった。各章ごとのポイントをまとめたページもしくは重要部分に線を引くなど、もう少し読者の理解に対して配慮があるとよかった。 1番興味があったのが量子コンピュータを応用して期待される技術開発であった。特に興味を持ったのがアンモニア生成の際に必要な触媒構造に対して量子コンピュータを用いた解析である。アンモニアは水素の代替エネルギーとして期待される物質であるが、現在実用化されているハーバー・ボッシュ法では生成の際に大量のエネルギーを消費する。そこで注目されているのがアンモニアを生成する自然界の細菌である。この細菌はハーバー・ボッシュ法と比較して低エネルギーでアンモニアを生成する。そのメカニズムを調べたところ、複数の金属原子が関与する触媒によるものであることが示されている。量子コンピュータはこのような触媒構造の解析に適しているとされている。これを利用すれば、アンモニア生成技術の効率化が進む可能性があると紹介されていた。この本では紹介されていなかったが、アンモニアは肥料にも使われているため、将来的にこの技術が応用されればアンモニアの生成エネルギーが下がり、その価格も下がる可能性がある。その結果、肥料生成にかかる原料コストを下げることにもつながり、農作物の生産コストの低減にも寄与する可能性がある。 量子コンピュータの技術に関して興味がある人だけではなく、量子コンピュータ開発に伴う他産業への影響の可能性を知りたい人にもお勧めな1冊である。

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