コモリーマン@Yoga好き❤️さんの書評 2026/05/07
西洋の自死を読んで 移民政策に関して興味があり、調査をしていく過程において、この本が候補に上がってきたため、興味を持ち手に取ってみた。 この本は欧州各国が外国人労働者や移民を受け入れることで、どのように欧州が自死していくかをまとめた1冊である。全体の構成としては、欧州が移民を受け入れた背景、移民受け入れ前の欧州、移民問題について述べられていた。興味深かったのが、移民を受け入れる前の欧州において、彼らのアイデンティティが不確かであったという点である。その理由として、1.過去の帝国主義、植民地主義、紛争介入失敗により相手国へ与えた罪悪感、2.ダーウィンの進化論などの影響によるキリスト教信仰の衰退と、それに伴う道徳・倫理観への影響が挙げられていた。アイデンティティが不確かな欧州人と、自国文化を嫌悪し欧州文化を見下す移民たちが出会うことで、欧州文化が移民側の文化に染まりやすい素地が形成され、それが欧州の自死につながると警鐘していた。また、それらの流れを止めようと市民が立ち上がっても、移民側に立つことは「善」であり、欧州の人々を代弁することは「悪」であるというエリート層の思想や、人種差別主義者というレッテルを貼られることへの恐怖により、マスコミなどから攻撃され、自浄作用が機能しなくなると主張していた。 日本においても、1に関しては第二次世界大戦における戦争責任に対する自虐史観と重複する部分があると思われる。また、外国人支援を重視する政治運動なども存在するため、欧州と同様の問題が発生する可能性は否定できない。そのような状況を避けるためにも、まず日本人のアイデンティティとは何かを学ぶ必要がある。そのためには、日本の歴史をさまざまな角度から学び直し、自分なりの日本人像を持つことが重要であると本書から感じた。 全体として、欧州の移民問題をアイデンティティの観点からまとめ上げており、日本でも起こり得る問題として警鐘を鳴らしている点は非常に有益である。しかし1つ批評的な点を述べるならば、本作品の主張において現在の欧州移民問題は、過去の帝国主義や植民地政策のツケ払いという側面もある。であるならば、欧州はいずれかの世代でその負債を引き受ける必要があり、それが現代に回ってきただけとも考えられる。罪の精算という観点で捉えるならば、単なる悲観論ではなく、どのように未来へ向けて折り合いをつけるかという視点も論じられていれば、さらに完成度が高まったと思われる。 移民問題に興味のある方は、ぜひ手に取っていただきたい1冊である。
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